「信頼」しても「信用」するな

矯正治療は患者さまの協力が不可欠になってきます。
患者さまにマウスピースを使ってもらったり、ゴムをかけてもらったりする必要があるので、そういった協力を患者さまにお願いします。
そんな時に患者さまが「きちんと使っています!」と言われればその言葉を信用することになります。
中には、「きちんと使っています!」という言葉がウソのことがあります。
そんな時に、患者さまに向かって「本当にきちんと使っているのですか?」と質問することは患者さまを否定するみたいで難しいです。
しかし、きちんと使って今の状況なのか、それともきちんと使っていないから今の状況なのかで、こちらの対応策も違ってきます。
糖尿病の患者様で、食事制限をきちんとしているのに血糖値が高いのか、食事制限がきちんとできていないから血糖値が高いのかでは、Drの対応は全く違ってきますよね。
患者様もウソをつきたくて噓をついているわけではないと思いますが、患者さまの噓を見抜くのも技術のうちかと思います。
長年臨床を積み重ねていると、患者さんの言葉の真実とウソが見抜けるようになってきます。
患者様との信頼関係は大切ですが、患者さまには患者さまの事情もあると思うので、勘違いして間違った使い方をしていることもあれば、「きちんと」という意味の解釈が違っていることもあります。
どんなにいい人でも、施術者の伝えたいことが100%正確に伝わるわけではないので、「人間は信頼していても結果は100%信用することは無責任になる」という意味で「信頼しても信用するな」と言われることがあります。

このことは「施術者と患者」だけでなく「上司と部下」や「親と子供」の関係にも当てはまります。
相手を信頼しようとする行為は貴い事ですが、100%信用することは、ある意味、上の立場の人間としての「責任放棄」になってしまいます。

そもそも「信頼」と「信用」の違いは何でしょうか?
信頼とは、「未来を信じて期待する気持ち」で
信用とは、「過去の実績や成果から値する評価」のことです。
〇×信用金庫と言いますが、銀行からお金を借りる時には何らかの担保が必要になります。
銀行が求めるのは「信頼」でなく「信用」です。
いくら自分を「信頼」してくれと頼んでも、「信用」しなければお金を貸してくれないでしょう。
信頼は「気持ち」であり、信用は「実績」です。
親子関係や上司と部下の関係において相手のことを「信頼」する気持ちは大切ですが、「信用」できる結果を出すためには、気持ち以外のテクニックも必要な気がします。

 

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